「トロピカル・マラディ」

「アジア映画の巨匠たち」せっかく大阪まで来たのだからと
追加でさらに一本。
タイのアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の「トロピカルマラディ」を鑑賞。

冒頭で中島敦山月記一文が流れる。なんだ??
タイの山間部に駐屯する兵士と、地元の青年との恋物語
二人の視線のやりとりや、指をからめあうししぐさに
胸がキュンと苦しくなる感じ。。。オートバイで疾走し、愛の手紙を送りあう…。
けれどもそんな淡い恋物語…は前半で終了。
いきなり、青年は消えてしまい後半部に突入。

後半は兵士が近隣で起きる人間や家畜の失踪事件を追うために
山に入るシーンから始まります。
実は失踪事件の犯人は虎なんですよ。そして虎は恋人が化身した姿。
孤独を埋めるために家畜や人を食べているのだけれど、
それでも埋められずに、闇の中で咆哮する。
人を好きになって一緒にいると逆に不安や孤独に襲ってきてしまう。
愛が深ければ深いほど、自分が1人であることを実感してしまうのですね。
思いの深さゆえに、猛獣に変化するしかなかったんだろうなあ。
相手を殺して魂を開放してあげるか、自分が食べられて彼の中でいき続けるか、
二人が救われる方法が一つしかなくて…ああ、重い。
山深い緑の中、しかも暗闇で対峙する二人は美しくもはかなくて。

男性二人の繊細な心の機敏や究極の愛の形を見ていると、
女性って現実的で俗物的でたくましいなーと思ってみたりね。
さっそく帰りに、青空文庫山月記をダウンロードして読みました。
月の出ていない、小雨降る夜でしたが。

今回の「アジア映画の巨匠たち」特集では素晴らしいアジア映画に出会うことが出来ました。
鋭く社会や心理を描写し、感性のスイッチを押してくれながらも
エンターテイメントとして楽しめるのが巨匠たるゆえんなのでしょうね。
そして、アジア旅行を重ねているのに、表面しか見ていなかった無知な自分を反省。
もっと勉強しなきゃね。

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